炭酸メトロノーム

映画やドラマの感想を気の向くままに自由に書き連ねてます/ネタバレアリ

誰も守ってくれない

誰も守ってくれない

 
 
 
前から気になっていた映画の一つがGyaO!で無料で視聴できたので、これを機会に見てみました。
ネタバレがありますのでご注意を。
 

 

 
まず最初はなんでもないある日のこと、
少年合唱団リビアの美しい歌声がおごそかに流れるなか
警察がある一軒の家を訪問し、ある事件の加害者(しかも未成年者)を逮捕し、
加害者家族の日常が緩やかに壊れていくさまは美しく引き込まれていった。
 
そして加害者が送致されてから、本題の加害者家族を守るために様々な手続きが流れ作業的に始まる。
 
理由は世間のバッシングに耐え兼ね、良心の呵責により自殺から防ぐこと、だが、本当のところは家族から供述を取るための手段として保護をするのだ。
彼らの混乱など余所に、離婚し妻の戸籍に入る、就学免除の手続きが事務的に進められ、家宅捜査が開始となる。
 
その間に野次馬が跋扈し謝罪しろとまくしたて、メディアは裏も取らず都合の良い話を扇情的に煽り、
やがてネットには加害者家族の情報が流される始末。
 
 
四方八方敵だらけの中、刑事は加害者の妹を守らなければならないが…
しかもその妹から供述と取れとまで無茶ぶりの命令も受けてしまう。
 
 
前半はバッシングと戦いつつ逃げ惑うスリリングな展開もあったが、
後半につれ加害者家族の心境など明かされるのかと思ったらほんの僅かであり、肩透かしをくらった感はあった。
事件のことを受け止めきれないものだから少女は荒れるシーンが長すぎた。
 
 
 
気になった点をいくつか。
 
落ち度のない少女たちが殺され、怒りの矛先は加害者に向けられいくが、その家族さえも同罪と断言するマスコミ、正義の名を語り仇のようにネットで流される情報のシーンはかなり誇張させた表現とは思うが、加害者家族にとって常に後ろ指を指される恐怖感を盛り込んで作られたのではないだろうか。
 
セミドキュメンタリー手法を取り、社会派ドラマぽくみせるのなら、この煽り立てるに彼らの存在にも一石を投じてもらいたかった。
煽っている彼らの家族も、ほんの些細なことで加害者になるのかもしれないのにと。
 
 
それから一番残念なのは刑事がもっと加害者の妹・沙織の心境に寄り添う部分がなかったことだ。
加害者家族という立場だが、こんな奴らには負けるなと早く諭して欲しかったのだ。
同じ歳くらいの娘がいるならなおさら、娘と重ねて語るべきてはなかったか。
 
劇中、常に心中苦しそうにしていた少女の志田未来の演技はこちらとしても心苦しくなってしまう。
ただ生きろ、家族を守れだけでは綺麗事を並べても加害者家族の未来は明るくはないことが多い。
 
きっと私はこのなんも落ち度がない少女にもっと現実とはなにか優しさをもって言葉を掛け諭し、
いち早く、混乱の渦から彼女を解放して欲しかった。
 
作品の出来は悩ましいところだけれど、加害者家族の保護という難しい立場の人たちを描くことは英断だとは私は思う。
最後に少女が身を挺して守ってくれた刑事にお礼を言うシーンは、
彼女に対して、微かな希望とこれからの未来に幸あれと望みたくなるものだった。