炭酸メトロノーム

映画やドラマの感想を気の向くままに自由に書き連ねてます/ネタバレアリ

映画キャッツを見るまでの話

2020年の1月の下旬に映画キャッツを見に行った。

 

 

きっかけは、ワイスピスーパーコンボの映画が始まる前に流れた宣伝であった。

 

へ~~~~キャッツ映画になるんだ~~~~

ミュージカルから映画になるのってだいたい当たりが大きいもんな。

レ・ミゼラブルとかオペラ座の怪人とかさ、ミュージカル疎い私でもキャッツってロングラン公演しているの知ってるしさ、舞台は敷居高いからこれを機に映画で一度は見てみようかねってさ…

などと少々期待しつつ予告が始まった。

 

え…なにこの造形…アリなの?

 

映画館のスクリーンいっぱいにキャッツのビジュアルが披露された瞬間、そう思わずにはいられなかった。

猫なのにヒトガタ体型、それも裸に産毛が生えたぐらいの毛量しかなく、顔は人間そのもので…

 

猫とは…?猫の可愛らしさを愛くるしさは徹底的に排除したかのようなビジュアル、その姿で演者は猫らしい四足歩行で移動する仕草を見せるものだから、人面猫という異形のものが爆誕していた。

この姿、どこかで見たことがあるぞ…

確かディズニー・チャンネルで放映されていたハットしてキャットだ!多分混ぜても遜色はないと思う。

 

などと私の動揺を置き去りにしながらも、人面猫たちは華麗な歌と踊りに興じている様子がこれでもか!とばかりに繰り広げられていく。

だんだんと人面猫に対する本能的に受け付けないぞ!というレッドゾーン域がグンと上がっていく。

 

 

でもさあ、ねえ、これが最新鋭のVFX・CGの集合体なんでしょ、あと文句のつけようのないキャスト陣、

さらに監督があの有名なトム・フーパーである。

リリーのすべて見たよ!顔のアップ多いな!

予算も時間も掛かっているやつ、世界の、最先端の、美術が集結した作品なのだ…

きっとこの人面猫の造形はグローバル視線なのだろう。

狭い島国でしか暮らしたことのない自分はなんと視野が狭い、遅れに遅れを取った美的感覚をアップデートしなきゃな!

 

そういい聞かせて画面に視線を戻すと…人面猫と視線がかち合う!

まるで値踏みするかのような目を寄越してきたので(多分)、私はヒッと効果音みたいな音が出るような息を呑んでしまった。

 

もういいわ、美的感覚とかどうでもいい、本能が、頭の中が、無理と難しい勘弁してくれしか浮かばない。

なにもされていないのに完璧に被害妄想炸裂が止まらない状態になっていた。

気がつくと歯の根をガタガタしている…恐怖を体感するというはこういうことかって。

自分は結構ホラー慣れはしているはずなのだが、予告だけでこんなにも恐怖を感じたのは後にも先にもこの映画キャッツぐらいであった。

 

そしてこの余波は長く続いた。

スーパーコンボ本編映画のOPの辺りまでは人面猫に支配されていたが、

ロック様とステイサムのやりとりが楽しすぎて、無事スーパーコンボに集中することができた。

見終わり、いや~~~今回も安定したアクションにぶっ飛んだ内容だったなと満足し、映画館の出口に進む。

 

ただ、見る前と違った景色があった。

それまで気にしていなかった映画キャッツのポスターが目に飛び込む。

瞬間、人面猫の顔が浮かび言いしれぬ恐怖がフラッシュバックする。

脳内はロック様とステイサムによってスーパーコンボされまくったのに、ポスター一枚で恐怖の人面猫セカンドインパクトを引き起こされてしまった。

そうして…なんだか…もう色々と整理がつかないまま帰路についた。

 

場所は違えども、同じくスーパーコンボをキメて、映画キャッツの予告を見た友達がいた。

某日、話す機会があったので私はスーパーコンボの感想そこそこに、キャッツの予告のせいでとてもとても翻弄されたことを語ってしまった。

 

私が見たのはなんだったのか?幻覚だったのか?

幻覚ならいい、私の頭だけが狂ってるだけなのだから。

しかし友だちも同様の恐怖を味わい涙目になったと言うので、あの時、スクリーンを制していた異形のものたちは確かに存在していたのだと確信した。

 

 

それから季節は変わり、アメリカで公開され批評家たちの感想がRTで回ってきた。

批評家たちの感想を翻訳した内容は、それはそれは面白おかしく例えた酷評のオンパレードで界隈をざわつかせた。

 

けれども…惨憺たる酷評っぷりを見るといやいや盛ってるでしょ?

そこまで酷く文句をつけなくてもいいのではと…

「1~5点で採点するなら玉ねぎ」なんて大喜利やってんのか?

 

あの有名な舞台だし、キャストの歌はかなり気合入っている。

人面猫の不気味な顔さえ慣れたら大丈夫なのでは?

ヤバめならネタにして昇華できるし、思ったより面白かったらそれでよし。

なによりも私猫ちゃん好きだし猫ちゃんのためなら死ねるタイプだから~~~イケるっしょ?

ここは審議を確かめねば…などと、怖いもの見たさと好奇心から私は見ることを決めた。

だって私、コクソンでブリーフ姿で暴れまわる國村隼さんを見ても耐えれたし。

 

ただ、今となってはこの時の私に、好奇心は猫も殺すという言葉を教えてほしかった。