炭酸メトロノーム

映画やドラマの感想を気の向くままに自由に書き連ねてます/ネタバレアリ

映画「貞子VS伽耶子」感想

元々四月一日のエイプリルフールから発生したネタが勢いついて映画化までになってしまった稀有な作品。

 

 

共通項は呪いと憎悪…のみ。

貞子と伽耶子は生い立ちも背景もなにもかも違うがふたりをどう同じ空間に居合わせるか、話の整合性が問われることになる。さらにVSとつくには戦わせるとなるが、ホラーという枠組みの中どう動かせるかと考えれば考えると悩みは尽きないのだ。

ネタが実現化すると色々とすり合わせることに大変なはずだ。

とにかくふたつの世界をリンクさせようとする試み、昨今ギスギスした世の中だが、今の邦画界にチャレンジャーなことをやってのけようとする人種がいるということがわかる一品。

さらに宣伝の仕方。Twitterやインスタグラムでホラーという垣根を越えて親しみを与えようと頑張っていること。貞子も伽耶子という異質な存在を効果的に使って宣伝をしていると思う。これによってあんまり怖くないかも~~~と思うホラー初心者がだまさ…いいえ興味を抱いて見に行こうと大勢生まれているのかもしれない。ちょっとその方たちの感想が楽しみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作品の内容と感想はここから。

ネタバレあります。

 

 

 

 

 

 

都市伝説とされている呪いのビデオが発掘され、不用意に見てしまったがために主人公たちに災いが降りかかるジェットコースターに加えて、近所に引っ越ししたがために呪いの家に招かれてしまう、ふたつの話を最終的にはリンクするのだけど、その前半がやや長いと感じてしまった。

うまく線と線を繋ごうとして丁寧なのはいいんだけど、後半の貞子伽耶子の見せ場が少なくなってしまったかなーと。もう少し後半も時間があればよかった。貞子と伽耶子の戦いを、憎悪の行く末を、そして彼女らの恐怖を味わいたかったのだ。

 

途中、40過ぎの口が悪い手練れの霊能者・安藤政信と霊視ができる赤いキャスケット帽子のおさげツインテール少女が登場。関係ないんだけどあの髪形をツインテールと書いていいのだろうかと悩んでツインテールで検索したら、ツインテール協会なるものがあることを知る。世の中広いね。彼らは一言で言うと、すごいラノベ感のある異質なキャラ。お好きな人には堪らない、そんな彼ら彼女らが貞子の呪いをリセットするため物語を動かしていく。

取った手段は呪いには呪いをぶつける!というそれはアリなのか?除霊の兆しも全くないが、致し方ない、違う世界をすり合わせるには無理やりでもしないとVSに持ち込めないのだろう。ここまでに至るために点と点を繋ごうとする構成に本当に頭が下がる。

 

 肝心なホラーの怖さといったら…ホラーを見慣れてしまった自分は笑いが先行してしまう。

貞子伽耶子、どちらも出現するときは前触れがあるので、あ、くる、くるねこれ…ふふっと心の準備ができちゃうのだ。さらに人を脅かすために、音楽効果も幾度か使われてしまうので単調になる部分もあった。

 

そして呪いの家の先行隊の俊雄君の身体能力のおかげでホラーにアクション身が加わった。というか彼はこんな手練れになっていたのか…呪怨初見では驚かしたりする系だったと思っていたのだけど。彼は彼で壮絶な過去があったのに微塵も想像させないぐらいに機敏に動き、正確に獲物を捕らえていく。ただ人を見つけては殺していくマッシーン、呪いと憎悪の果てなのか。殺し方も頭の上に飛び乗って首を伸ばすストレッチ方式がお好きなようです。そして多分ね、恐怖を煽るために俊雄君が時々アップになるのだけど、赤い舌を出してチロチロ見せてくる舌技を披露しながら首をかしげるんだもん、あの舌効果に思わず笑いがこみ上げる。これホラーなはずなのに、使い方一つ間違えるとギャグをはらんでしまう。ホラーと笑いは紙一重なのねと学んだ私。

 

正直怖がる大学生と高校生の悲鳴のほうが怖いものがありました。なんというか本当に怖いって感じの悲鳴、絶叫というより、パニックがパニックを呼ぶような悲鳴にならない、か細い叫びと息遣いが合間合間に聞こえるんですわ。

呪いのビデオ女子大生サイドはこれでもかッ!というぐらいに百合的な描写があったりする。先に主人公の友達がビデオを見てしまい、呪いが解けずヤンデレ化するのだけど、もうぞくぞく来た。これは見て欲しい。除霊するシーンもこれよく事務所がOKだしたね…と内心心配になってしまったり。

 

これ以上書くと疲れるんでストーリー最後は割愛しますが、EDの聖飢魔Ⅱが流れる中、おめでとうおめでとう!と、エヴァ最終回並みの拍手を送りたくなるラストでありました。

 

個人的には主人公の友達がインターネットで流布した呪いのビデオのせいで、世界がどう混乱に陥っていくのか見届けてみたかった。ビデオという媒介は消えてしまったが、代わりに身近になったネットを使い、人を呪い殺すシステムが間近に潜んでいると思うとゾッとしませんかね?最強の霊媒師もいないなか、この呪いシステムを止める方法はあるのか?続きが気になります。