炭酸メトロノーム

映画やドラマの感想を気の向くままに自由に書き連ねてます/ネタバレアリ

映画「ハンニバル」

羊たちの沈黙」の続編となる映画。

この映画、ちょっと前に見たけれどやっぱり面白い。1991年制作だからもちろん時代は感じるけれど、役者さんから話の切り口やカメラアングルから小道具に音楽…あげればキリがないほど私好み。

人食いで逮捕されたレクター博士とまだFBIアカデミーという身分のクラリス、このふたりのスリルある駆け引きは時を経ても見応えはあるし、度々、レクター博士が画面いっぱいに収まりクラリスに向けて言葉を発するのだが、まるで自分に向けて発せられる言葉だと錯覚してしまい、クラリスと共に緊張感を味わってしまう。

また最小限に抑えた音楽は物語と役者の演技の邪魔をしないので超優秀、展開もスピーディだし一切余分なところがない。

初見時はレクター博士が逃走劇を企てる所やクラリスが夫人の家をノックした時後の展開と手法はこれが物語の力と圧倒される。それでいて事件への一件落着と次への物語は既に始まっているというラストの落ちまで完璧なシナリオだと思う。

 

羊たち~がレクター博士の言葉によるクラリスの心理・精神迫りながら事件解決に導かせるサスペンス映画(と私は思っている。)

そのせいかレクター博士は彼女の手助けになるために使わされた父親のようなそんな擬似愛、性の匂いが微塵もしない愛を感じたのだけれど…

 

 

ハンニバル」はそんなふたりの10年後のお話。

見たところ…ふたり惹かれてはいけないけれど否が応でも惹かれてしまうようなラブストーリーとも取れました。

ラブとか書いたけれど、内容は15禁でグロテスクなシーンがあるんだよなあ。

ってことで、グロ的なネタバレしますので心臓の弱い方は避けたほうが無難かと思います(^O^)/

 

 

 一作目からだいぶ年数経ち、監督と主役のジョディ・フォスターからジュリアン・ムーアとなりテイストも違って見えます。

 

レクター博士が潜伏していた舞台もイタリアのフィレンチェは耽美、退廃、憂鬱、幻想的、オペラをBGMにして、残虐な世界が繰り広げられてもある種の美学が伝わるようなそんな画面の作りがさすがリドリー・スコット監督ならでは。

 

前半の話の流れは分かりやすくフィレンチェ編は良かったんだけれどな。

クラリスに振られた腹いせに嫌な姑のような地味な嫌がらせをするポール、

レクター博士から被害を受け唯一生き残りの被害者富豪のメイスン、

フィレンチェで刑事の仕事に就きある日レクター博士の正体を知り懸賞金目当てで博士を売ってしまうパッツィ刑事。嫁は美女、だがお金が掛かりそうなタイプだ!

 

この三人がクラリスレクター博士に絡み話が段々と繋がっていきます。

 

後半、舞台はアメリカへ。メイスンはレクター博士に報復したいのでクラリスを窮地に立たせ餌として誘い込みます。

罠だと分かっていてもクラリスのピンチには駆けつけてしまうレクター博士。でも、接触はするけれどクラリスが寝ている時に触れる、彼女が余所を向いている時に微かに髪に触れるぐらいのぎこちない愛情をアプローチします。

またクラリスが肩に被弾し、手術を行った後、きれいなドレス着せ靴を履かせ美しく変身させます。

その後ふたりは顔を合わせ接触するのですが…レクター博士は自分の世界へと招きたいけれどクラリスは抗おうとする。

 

レクター博士で、パッツィ刑事とメイスンの三人は分かりやすく描かれていたけれど、クラリスにだけはもう少し親切設計してもなーと思ったところでクライマックス突入。

 

ここで二人の心は全く違うものだったですよね。

 

レクター博士の真意がわかり…ああ、そういうことだったのかと。

博士はクラリスに対しては男女の愛を求め、

クラリスは早くに亡くした父親へ代わりとして父子の愛を懇願していた(と私は思っていた)、羊の悲鳴を止めるためにレクター博士をなんとかして殺そうとします。

究極の愛を持ってもクラリスは全く受けれてくれない。

修復不可能だと知り、レクター博士は去っていく。

 

この時、常に紳士的な彼が受け入れてくれないと怒りの感情を見せた時、やはり怪物といえでも人間なのだなあと…

 

 

私は親子のような気持ち…なのかなあと羊たちの沈黙を見てそう思っていたんで、段々と違和感が生じてしまい、ラブの気持ちにのめりこめなかったんだけれどね。

 

後から思うと、クラリスもずっとレクター博士の資料を集めたり繰り返し肉声を聞きこみ、異常と思えるほど彼の想い出に縋っていた。ふと安堵の表情をする表情が垣間見える時もあり、また自分を取り巻く組織との軋轢もあり、向こう側の世界に惹かれていたような。

 

 

 

クライマックスはまー普通の感性だったら受け入れてくれない代物だと私は思うんですけれど。振られてしょうがないよ、うん、博士。

 

なんだって生きているポールの頭蓋骨を開け脳みそ活造りからのソテーシーンはそりゃもうグロだし狂気だし、薬漬けにしたせいで人ではない人に変わり果てたポールの狂気の言動も重なり、狂気のデュオありがとうございました。もうお腹いっぱいです!グロシーンはですね…正直引きましたけれど、しるこサンドを噛み締めながらなんとか耐えました!